第10章 Betrayal
「俺のモットーは疑わしきは罰する、だ。
…場地を捲る。」
『…』
特務隊…
東卍内で唯一内輪揉めが許されている部隊
総長の合意なしでその権利を行使できる、所謂風紀委員
だが、彼はいつも任意で私にひと言断る
…お願いした覚えはないし、彼のその権利を私が侵害できる道理はない
あくまで私の役割はその特務が万次郎の意思と添っているかを確かめること
そして今回は対象が圭くん
圭くんが裏切りなんて絶対に有り得ない
それに稀咲のことがある
今回は止めておきたい
…そのためには
『…武藤さん、久々に一試合、どうですか?』
「…いいな。」
ニヤリと笑って武藤さんは脇に避けてあった将棋盤を取り出す
…彼の趣味のひとつである将棋
勝った方がひとつ願いを相手に叶えさせられる
いつからかそんな暗黙の了解が私と彼の間にはできていた
私が勝負を頼む時は特務の抑止
彼が頼む時は私の持つ情報の公開
私は今回、圭くんの特務を阻止したい
そしてそれは彼の職権を侵害する形であってはならない
だからこその勝負
「先行は」
『どうぞ。』
パチリ
パチン
互いに真剣に駒を動かす
…大きな手は互いにまだ
しかし確実に布石を並べる
「…お前も稀咲入りに反対とはな…アイツが入って1番楽なのはお前だろうに」
『…信頼できない人間を自分のテリトリーに入れたくないだけですよ』
「指し方にも出てる…
…そんなに内側に入れたくないか?
俺やお前が居るのに」
パチリ
『そうですね。
あとは…同族嫌悪ってやつですかね』
「稀咲も頭がキレるらしいからな」
『ええ。
…力を持たない私は、同じものを武器にする人間が怖くて仕方ないのかもしれません。』
パチリ
「…流石だ。」
『恐れ入ります。
…圭くんのことは私に任せてください。
彼は誰より万次郎を理解してる。』
「わかった。
…またやろう。」
『ええ、是非』