第2章 Chance
「っ、わかりましたよ!
でも、何かあったらすぐ逃げるって約束してくださいね!!」
『うん。ありがとう。
…橘、さん?でしたっけ?』
「はい。」
『…お話し、しましょう。』
私は千冬くんの背中から出て、橘さんの近くに行った。
千冬くんは橘さんを睨みつけながらゆっくりと下がっていく。
「…随分と警戒されているようですね、僕は。」
『東卍のスパイを疑っているんだと思いますよ。
…千冬くんは、ずっと危ない橋を渡ってきたから。』
「そうですか。」
橘さんはベンチに腰掛けて私を見上げる。
私は座らずに、彼の前に立ち、その瞳を見る。
「正直、今は貴方方の持つ情報に興味はない。
僕はただ本当に貴方に話を聞いて欲しかっただけですから。」
『…それで、お話しと言うのは?』
「伊織さん、12年前の記憶が所々曖昧だと感じたことはありませんか?」
『…それは、12年も経てば忘れることもありますけど、、、』
「そうですか…単刀直入に申し上げます。
信じられないかも知れせんが、もしかしたら貴方はタイムリープしている可能性があります。」
『は?』
「僕自身も信じがたいことなんですけれど、、、」
『…何を言ってるんですか?』
この人本当に警察官?
新手の詐欺師とかじゃなくて???
急に話しかけてきてタイムリープだなんて、、、
「…もしかしたら、佐野万次郎と接触できるかも知れないと言えば、少しは話を真面目に聞いてくださいますか。」
『…』
「お願いします。
僕は姉を助けたいんです。」
『ぇ?でも、お姉さんは昨日…』
「はい。死にました。
わかっていたのに、防げなかった…!」
『わかっていたって…?』
「…貴方が信じられないのはわかります。
ですから、確かめに来てください。
3日後の7月4日、○○駅。
そこで花垣武道と言う26歳の男性がホームから背中を押されて転落します。」
『は?』
「彼は僕が助けますから、貴方はそれを確認し、僕の言っている事を信じるかどうか決めてください。
僕の用はこれだけです。
嗚呼、彼に話すのは自由ですけど、僕としてはあまり話して欲しくはないです。
…では、また3日後に。」