第1章 Blanc
ゴォォォォ
アメリカから12時間を超えるフライト。
時差ぼけと季節の変化でおかしくなりそうな頭を振って気持ちを入れ替える。
めんどくさい入国手続きを済ませ、空港の外に出られたのは着陸してから2時間後。
快晴の空。
狭い空間からやっと解放された爽快感から大きく伸びをしながら呟いた。
『…やっっと着いた。』
10年ぶりの日本の空気を胸いっぱいに吸い込む。
周りから聞こえる言語が日本語で少し変な感じだ。
それからまた空港からバスに乗り、昔住んでいたあたり──渋谷に借りたマンションを目指す。
当たり前だが、窓から見える景色は10年前からはすっかり変わってしまっていた。
『…私が今年25だから、、、前は15歳。
そりゃ変わってるし、あんまり覚えてない、か。』
街角にあったたばこ屋さんはコンビニに変わり、街行く人はただ真っ直ぐに目的地に向けて無表情で進んでいく。
あの頃の私たちとは全く違う。
マンションに着き、鍵を開ける。
日本特有の外開きの玄関の戸を開けると、中から先に送った段ボールの匂いが鼻腔を駆ける。
さあ、片付け開始だ。