第9章 Check
「伊織さん?」
『…』
寝たな…
あの会話の後すぐに首をうつらうつらとさせていた伊織さん
5分も経った今、完全に寝落ちしてしまっていて穏やかに寝息を立てている
『スー…スー……』
丸一日寝てなくて頭使って仕事してそれから死刑囚となったかつての友人との面会…
ハードスケジュールにも程がある
実際疲れていたんだろう
寝るのも早かったし起きる様子も一切ない
道沿いに見えたコンビニに適当に車を止め、助手席で座ったまま眠る伊織さんのシートベルトを外す
起こさないように気をつけながら彼女の身体を抱くと、後部座席に横たえた
『ん…』
「っ!」
運転中は髪で見えなかった表情
小さく声を漏らしながらあどけなく眠る伊織さんは、起きている時よりも隙だらけで思わず喉を鳴らしてしまった
…警戒心ゼロで完全に眠ってしまっている伊織さん
信頼されているのは嬉しいが、あまりの無防備さにやはり橘の車に乗せなくてよかったと心から想う
「…ふぅ」
『…ん、』
なんとか起こさずに後部座席に移動することに成功し、俺は再び運転席に座る
ここから橘との待ち合わせ場所まで約20分
それから拘置所までは約10分ほどだと聞いている
30分は寝かせてあげられるな
その程度で伊織さんの疲れが取れるとは思っていないけれど、少しでもマシになると良い
そう思いながら今度はさっきよりも数倍揺れに気を遣いながら橘との待ち合わせ場所まで車を走らせた