第2章 Chance
あの日から、、、千冬くんと再会してから2年が経った。
私は27歳、千冬は26歳になっていた。
どれだけ探しても、どれだけ情報を探っても、幹部クラスの人間の情報は掠りもしない。
『はぁ…』
「想像以上に手強いですね…」
『うん…暴走族の癖に頭良すぎない?この人たち。
私たちがいた時の東卍なんてさ、心配になるくらい頭弱い人ばっかりだったじゃん!』
「場地さん筆頭に、ね。」
『それ言うならパーちゃんも中々でしょ。』
「確かに、
それをフォローするつもりで出来てないペーやんも相当でしたけどね。」
『あ"ーーー、結構際どいところ突いてた筈なんだけどなぁ』
2人でお酒を煽りながら近況報告をする。
あの日からずっと手分けして情報を集めてはいるが、中々上手くいかない。
嗅ぎ付けられないように、注意深く探るのは相当骨が折れる。
2年間調べ続けても全くと言っていいほど手がかりが掴めない。
背中を柵に預けて空を見上げる。
夏の大三角が綺麗だ。
「落ちないで下さいよ。」
『なにそれ、遠回しに重いって言ってる?』
「そんなことないです。」
千冬くんともだいぶ打ち解け、そんな会話までできるようになった。
今日はニュースに東卍が出てた。
抗争の時に祭りにトラックが突っ込んで、一般人が1人犠牲になったらしい。
『本当に、どこにいるんだろう。』
「…」
『万次郎はさ、どんな思いでこの12年間を過ごしてきたんだろうね。』
「…そうですね。
それは直接会って聞いてやりましょう。」
『ふふ、そうだね。』
「高宮伊織さんに、松野千冬さん、ですね?」
『っ!』
「伊織さん、下がって。」
千冬くんにぐいっと腕を掴まれて、柵と千冬くんの背中の間に押し込まれる。
千冬くんの只事ではない雰囲気に心拍数が上がる。
「…誰だ。」
ゾクリと、肌を刺すような殺気。
いつもよりも数倍低い声を出す彼に戸惑いを隠せない。