第9章 Check
「…ここ?」
「ああ、そうです。」
ぼんやりとそんなことを考えながら運転していると、いつのまにか姉さんのマンションだ
…こんな運転の仕方、警察官失格だな
他愛もない会話をしながら階段を登る
…12年ぶりの再会か…どんな顔するかな、姉さん
「ナオト、俺やっぱ、会うのやめとく…」
「え?
どうしたんですか、急に」
さっきまで嬉しそうに話していたのに…
「よく考えるとさ、確かにヒナの命は救ったよ?
でもヒナは救われたこととか知らないじゃん?
ナオトは会えるよ?弟だし
でも俺は赤の他人だから…」
「タケミチくん…」
「幸せになってくれればそれでいいんだ」
「…」
そういいながら彼はたった今登ってきた階段を降りていく
…確かに彼の言うこともわかる
というより、彼の言うことの方が正しいのだろう
12年…
この年月は長い
子供は大人に成長し、昔と変わらない人間なんていない
でも、人の運命を変えるということがどれだけ大変なことなのか
人1人の運命を変えるということはどういうことなのか
それは僕には計り知れない
…実際に過去に行って変えてきたタケミチくん、或いは伊織さんにしかわからないんだろう
その苦労を理解することはできない
ただ、容易なことでは無かったというのは、彼の手の傷が物語っている
少なからず傷を負いながらも彼は姉さんを守ってくれたんだ
僕なんかが言えることではないかもしれないが、、、別に会うくらい…いいのではないだろうか
姉さんは確かにタケミチくんのことが好きだった
姉さんは今でも彼との思い出の金魚を大切に育てている
だから僕は、会って欲しい
話してみて欲しい
君のいない12年間の姉さんの人生を、
姉さんを想い過ごした彼の12年間を
それを2人で語り合うことは難しいことだろうか