第9章 Check
「…佐野万次郎、高宮伊織、そして龍宮寺堅…」
伊織さんの電話を切ってから車を走らせてタケミチくんを迎えに行く
…東卍が巨悪化しているのは知っていた
それ即ち、彼女の目的が果たされていないということを示している
それも分かっていた
「…姉さん」
でも、姉さんは生きている
今、生きてるんだ
昨日だって電話したし、教師としても順調な生活を送っている
…まだタケミチくんからタイムリープの話を聞いてはいないが、おそらく過去のミッションが成功したんだろう
そして未来は変わり、姉さんは生きている
僕たちの目的は果たされたんだ
僕は冷めやらぬ興奮を抱えたまま、タケミチくんとの待ち合わせ場所に到着した
…彼は前の世界と変わらず、だいぶだらしない格好をして僕を待っていた
「…タケミチくん、お待たせしました」
「直人!!」
「…やってくれましたね。」
「ああ!ヒナ、生きてるんだろ!?」
「はい!…このまま会いにいきましょう!!」
タケミチくんを助手席に乗せ、姉さんのマンションへと向かう
「…そういえばタケミチくん、君は数時間前にこちらの世界に戻ったようですが、、、空白の12年のことは覚えているんですか?」
「いや…だから正直訳わかんなくてさ。
クビになったはずのバイトもちゃんとやってたし、、、」
「そうですか…」
「この傷見るまでは夢かな〜なんて思ったくらいだ」
「…なるほど、こちらの世界で生きてきたタケミチくん自身の記憶は継承されないんですね」
「みたいだな」
過去を変えた影響で、未来に帰ると急に周りの状況が変わってるってことか…
それなら今の状況を把握するのが難しいだろう
伊織さんはどうやって今の自分の状態を確認したんだろうか…もしかしてそれを確認するために僕に連絡してきたのか…?
いや、それはないな
それなら僕なんかよりよっぽど信頼している松野さんに頼むはずだ
…彼から話を聞いた後でタイムリープしようと僕に連絡してきたと考えるのが普通か…