第1章 Blanc
「それから、マイキーくんは変わりました。
集会にもほとんど出なくなって、1人でグループ一個潰しに行ったり、自分から喧嘩ふっかけに行ったり…
荒れに荒れて、誰にも手がつけられなかった。」
『っ、』
「それでも、マイキーくんは1人で全部やってた。
いくらひどい喧嘩でも、東卍の特攻服に袖を通すことはなかった。
…場地さん曰く、東卍を巻き込まないためだって、」
『…』
「でも、ドラケンくんが亡くなって1年後の日、場地さんは稀咲とマイキーくんを引き離そうとした。
そしたら、稀咲の裏の部下と東卍の抗争に発展して、その中で俺が刺されそうになったのを庇って場地さんは…」
ギリギリと、硬く手を握る千冬くん。
皮膚を突き破りそうなほど、キツく握る手。
…そっか、万次郎を壊したのは、私だったんだ。
けんちゃんが死んで、私が居なくなったから、、、
みんなが自分から離れていったから、、、
それに、圭くんが死んで、戻れなくなった。
「…今回、伊織さんが俺に掛けてくれた電話。
あれは10年前、場地さんが用意したものなんです。
この番号を知ってるのは自分だけだからって、番号の書かれた紙とケータイを俺に渡して、「紙の方はお袋に渡しておいてくれ。何年後か、何十年後か、、、絶対伊織は俺ん家に来るから。」って。「ケータイはお前がずっと持ってろ。伊織が掛けてきた時は、ちゃんと会って話してくれ。」って。」
『圭くんが…?』
「信じられねぇっすよね。
あの場地さんですよ?
中学留年する場地さんがこんなこと思いつくなんて、、、」
小さく鼻を啜りながら、少し笑って千冬くんはそう言う。
「今日、電話がかかってきた時は本当に驚きました。
正直、もうかかってこないんだって、どこか諦めてましたから…」
『ごめんね、、、遅くなって、』
「いえ、こうして今会えたんです。
場地さんが繋いでくれたんです。」
そう言って笑う千冬くんの頬を一筋、雫が流れた。