第8章 Surprise
「〜っ!…ってあれ?痛くない」
『何?痛くして欲しかった?』
「い、いえ!そんなことは!」
『アハハッ』
パッパと剥いだ割には全く痛くなかった
救急医って時間が全てだって聞いたことがあるから、痛いとかそういうの二の次で結構荒いんだと思ってた
『うーん、一応くっついてるし、縫い目も綺麗だね。
ま、私の方が上手いけど』
「ハハ…」
『これなら抜糸してもいいかもね〜
どう?私がやったげよっか?』
「え!?」
『下手な奴がやったら痛いよ〜抜糸は』
ニヤニヤと笑いながらそういう伊織さん
こ、これはなんて答えるのが正解なんだ!
病院の先生には昨日まだって言われたばっかだぞ!
『どうする?』
ニヤリと笑ってカバンからピンセットを取り出した伊織さん
…これはもう
「…お願いします」
『は〜い』
断れない顔だった
大丈夫だ!ナオトの情報を信じろ!この人は天才救命医だ!!
伊織さんの腕を信じろ!
というより、たかが抜糸だ!!ドラケンくんなんか無麻酔オペだぞ!抜糸くらい耐えろ!俺!!!
『あ、失敗して痛かったらゴメンネ?』
「えぇ!?」
なんでこの人そんなこと言うかな
見てられないよ
怖いよ
てか人の手の糸抜くのになんでそんな嬉しそうなんだよ
『はい、終わり』
「へ?」
『もういいよ。終わったよ。』
「ええ!?うそん!?」
『嘘ついてどうするの…ほら』
「あ、」
本当に終わってる…
え?今ほとんど感覚なかったぞ…!?
『上手いっしょ』
「は、はい…」
『いや〜実は抜糸久々だったんだよね〜
普段私はやらないし』
「は!?」
『だからどうかな〜って思ったんだけど、案外まだ忘れてないみたい』
「よくそれであんな顔してできましたね…」
『医者が不安な顔してたらみんな怖いでしょ?
だからよ』
なんだかこの一瞬で伊織さんのすごいところをいっぱい見た気がした