第8章 Surprise
『…』
「…」
「…」
何も言えなくて黙り込むしかない
そういう事故は医者の時嫌というほど見てきた
バイクは車体に守られない分、本当に危ない
「伊織、」
けんちゃんが優しく私の名前を呼ぶ
私はけんちゃんのベッドの方に顔を向けると、けんちゃんは諭すように優しく話し始めた
「…バイクの上でケータイ触ってる時、片手はケータイ、もう片方の手はどうしてた?」
『え…?万次郎の腰に回してたけど、、』
「じゃあマイキーの手はどこにあった?
マイキーは両手でハンドル握ってたか?」
『万次郎は…あ!』
「握ってねぇだろ?
片手はお前のこと掴んでたんじゃないか?
雨で視界も悪く、顔拭いたりもしたいのに、それもせずにお前のこと掴んでたんじゃないか?」
『…うん。』
その通りだ
私が片手離してる間、万次郎はずっと私のことを掴んでいた
「…もう分かるだろ?
バイクってのは普通片手で運転できるほど簡単じゃねぇ
お前はマイキーまで危険に晒してたんだ。」
『…』
「マイキーは片手で運転するくらいの無茶するほどお前のこと大事に思ってる。
三ツ谷だってそうだ。
もちろん俺も場地も。
だからお前もそれに応えろよ。エマにも似たようなこと言ってたろ。」
『うん…ごめん。
もうやらない。』
「…わかったならいい。」
けんちゃんはそう言って私にたかちゃんの作ったガトーショコラを差し出した
それを受け取り、下げていた顔を上げると、みんなは優しい瞳で私のことを見てくれていた
そうだよね
バイクの2人乗りは2人で一緒に運転するもの
私1人の身勝手で、万次郎まで危ない目に合わせてたんだ
…エマに偉そうに言っといて、、、本当ダメだな
『…ありがとう、、、その、怒ってくれて』
こうやって、危ないことをしたらきちんと怒ってくれる
こんな大切なみんな、こんなに想ってくれるみんなに恵まれて、私は本当に幸せ者だ