第1章 Blanc
「ご注文お決まりでしたらお伺いします。」
「あ、じゃあ俺はハンバーグステーキで。」
『私はオムライスを』
「かしこまりました。」
とりあえず席について注文を済ませる。
10年ぶりだし、圭くんみたいに仲がいい訳じゃなかったから少し気まずい。
「10年ぶり、ですかね。」
『うん。』
「どちらに行かれてたのか、聞いても良いですか?」
『…アメリカにいたの。
戻ってきたのはついこの前。』
「!アメリカに…!!
っ、そう、ですか。」
寂しそうに笑う千冬くん。
…きっと、圭くんの面影がまた消えないんだろう。
それもそうか。
千冬くんは目の前で彼を亡くしたんだ。
『千冬くん、今は何をしてるの?』
「今は小さな子会社を経営してます。
動物系の…
伊織さんは?」
『私は医者をしてる。救命医よ。』
「…凄いですね。」
『千冬くんこそ。』
ぎこちない会話。
照れたように顔を逸らす彼を見て少し笑みが溢れる。
緊張もほぐれてきて、私はひとつ息をついた。
『私ね、こっちに帰ってきて、何もかもが変わってて、怖くなった。
…当たり前だけど、、、10年って、大きいね。』
「…」
『大切な人は居なくなってて、好きだった人は遠くに行ってしまってた。
…まるで浦島太郎になった気分。』
「…」
『千冬くん、東卍はどうなっちゃったの…?
圭くんは、やっぱり、、、』
彼の名前を出すと、わかりやすく千早くんは肩を震わせて顔を背けた。
「っ、場地さん、は、、、ご存知の通り、亡くなりました。」
『…』
「マイキーくんを止めようとしたんです。
そしたら、大きな喧嘩が勃発して…」
『うん。』
「本来、場地さんは死ななくてよかった。
…場地さん、は、、俺を庇って、」
『…』
「俺、が、、、」
小さく肩を震わせながら、絞り出すようにそう言う千冬くん。
彼がそうやって感情を出す分、私はどこか冷静になれた。
千冬くんを庇って、か。
圭くん、そうだったんだね。
圭くんは、千冬くんを守りたかったんだね。
なんて優しくて強い人。