第7章 Incident
『でも、さっきあの馬鹿のせいで麻酔が割られた。
ここで簡単なオペをするのに、無麻酔でしなきゃならない。
当たり前だけど死ぬほど痛いと思う。』
「ハハッ、そうかよ。」
『…でも、私はやるわ。
けんちゃんが嫌だと言っても、覚悟はできてると言っても、、、私は貴方の体に手を付ける』
「ハァ、ハァ、、そうか。
…いいぜ。
ハァ、んなみっともねぇカッコ、晒さねぇから、、ハァ、」
一度だけ、麻酔なしでの処置の論文を読んだ記憶がある
その時は氷を患部に当てながら感覚を麻痺させてやったと書いてあった
…でもここにはそんなものなんてない
取りに戻る時間もない
そしてこのけんちゃんの状態…
いつショックを起こしてもおかしくない以上、離れられない
『…出来るだけ最小限にやるから…
それに、ただ耐えろとは言わない』
「ハァ、ハァ…?」
『私もその痛み、請け負うわ』
「!?」
とは言っても、流石に自分のお腹を切る訳じゃない
そしたら今度こそけんちゃん死んじゃう
『ここ、握ってて
暴れるなって言っても無理だろうけど…動いたら変に周りの臓器傷つけちゃうから、できれば動かないで。
その代わり、ここ思いっきり握っていいから』
「…いや、いい」
『ダメ
掴んでないと、けんちゃん私のこと突き飛ばしかねないもの。
そしたら治療にならない』
半ば無理やりけんちゃんの手を私の足首に回し、カバンの中から鉗子をいくつか取り出す
…本当ならメス入れて広げたいとこだけど、流石にそれは…
『…入れるわよ。』
「…ああ」
グチ
「っあ"!」
『…』
けんちゃんの手に力が入る
と、思うと彼は緩めた
…この状況で私のことまで考えるなんて、、、
それでも私はなんでもないように手を進める
暗くて見にくい…
あった、血管…!!これを掴んでクランプ…
カチカチカチ…
よし、1箇所は終わり
手前の方からやったから、あと2箇所…奥の方の血管…