第7章 Incident
「あー…じゃあ俺そろそろ行くわ」
「おー行ってら!!
男見せろよ〜ケンチン!」
『エマの浴衣、ちゃんと褒めてあげるのよ?』
「わーってるよ!」
けんちゃんは幸せそうな、それでいて照れた笑みを浮かべながら武蔵神社へと歩いて行った
『本当、微笑ましい。』
「だよね〜
エマもケンチンなら任せていいなって思える。」
『うん。
逆にけんちゃん以外にあげられないね。』
「ハハッそれもそうだ。」
私たちの間に心地よい風が通る
万次郎の柔らかな金髪と私の黒い髪が風に舞い、目を細めてそれを見やる
ピピ ピピ ピピ
『?何この音』
「あ、俺のメール」
『なんか目覚ましみたい。
変えたら?』
「別になんでも良くね?」
そう言いながらガラケーを開く万次郎
と、その目を大きく開くと彼は徐に立ち上がった
「伊織、俺行かないと」
『…誰から?』
「ぺーから」
『!なんて!?』
今までメールも電話も無視
会いに行っても逃げられて、何も掴めなかった彼からの連絡
やっぱり、今日は何かある
「この前メビウス潰したとこで待ってるって
そこで話があるってだけ書いてある…」
『…話』
「待ち合わせが6時だから今から行く」
『私も一緒に行く
連れてって』
「伊織…」
『何があるか分からない。
もうこれ以上後手に回る訳にはいかないの。
今日はもう、挽回しようがない。
…大丈夫。2人が話す時は席を外すから』
「…」
万次郎は少し黙って、じっと私の目を見る
私も晒す事なくそれを見つめ返す
「…わかった
でも、俺から絶対離れるなよ」
『約束する』
そう言うと、私はカバンを持ってヘルメットを被り、万次郎のバイクの後ろに乗った