第7章 Incident
『そう。
…私たちにとってのけんちゃん。知りたい?』
「お、俺もなんかあんのか?」
「当たり前じゃん」
私と万次郎は2人で顔を合わせると、ニヤリと笑った
「ケンチンは俺たちの心だから、俺たちに人を想う心を持たせてくれる。」
『けんちゃんが居なくなったら、きっと私たちは人を想うこと、そして想われていたことをわすれてしまう。そしていつか、人のことを傷つけてしまう。』
「それはきっと、俺たちだけじゃなくて東卍でも同じだ」
2人でそう言うと、私は万次郎と繋いだ手をキュッと強く握る
こうやってゆっくり話せるのも久々だ
やっぱり、私と万次郎にはけんちゃんが必要だ
それと同時に、私とけんちゃんにも万次郎が必要
…足らないところを一緒に補い合える
そんな仲間だから、こうやって偶に恥ずかしいことでも言い合えるんだ
「…コレ相当恥ずかしいな」
「あー!ケンチン顔真っ赤!」
『本当だ!エマに写真送ってやろ〜』
「ばっ!撮んな!!」
『あっ逃げた!!』
「追っかけるぞ!伊織!!」
『うん!!』
そう言って私と万次郎はけんちゃんの後ろを全力で追いかけた
結局、私の体力が先に底を尽き、諦めて歩いていると少し先で二人は笑って待っていてくれた
ほら、と言って差し出された手を取ると、今度は3人で並んで意味もなく私の家まで走った
きっとこの時間こそ、世界で1番美しい時間
世界中の幸せを敷き詰めたような、そんな時間だった