第7章 Incident
『ありがとう。
スッキリした。』
「うん」
『万次郎も抱えすぎちゃダメだよ?
支えあってこその仲間なんだから。』
「わかった。
…俺にとっての伊織って、どんなものだか知ってる?」
『何?急に』
「知りたい?」
『ふふ、聞いて欲しいの?』
「うん。」
『じゃあ、教えて?』
すると、万次郎は手を空に掲げて話し始める
「伊織は俺の脳だから、俺のことちゃんと動かしてくれる。
伊織が居なくなったらきっと俺は俺じゃなくなる。きっと、俺らしく動けなくなって、俺じゃない何かに動かされるようになる。
それは俺だけじゃなくて東卍でも同じ」
そう言って万次郎は掲げていた握ってパタリと地面に降ろす
私はそれを引き継ぐように、自分の手を空に掲げた
『万次郎は私の身体だから、私の思いを表現してくれる。
万次郎が居なくなったら私はきっと誰にも何も伝えられなくなる。そして、何も見えなくなる
これも私だけじゃなくて、東卍も同じ』
そう言って掲げた手を目元に下ろして目を塞ぐ
と、その手を万次郎は取って地面で一緒に繋いだ
「なぁに2人で良いこと言い合ってんだよ。
俺も混ぜろよ」
心地の良い低音の声
2人でそちらに目を向けると、河原の上から私たち2人を見下ろすけんちゃんの姿
「ケンチン、聞いてたの?」
「ああ。伊織は俺の脳だからってとこからだけどな」
『なんか恥ずかしいね』
「そうかよ。
…だが、俺も激しく2人に同意だな。
よっと」
けんちゃんは万次郎の隣に寝転ぶと、同じように手を空に掲げて言った
「俺にとってもマイキーは身体であり、伊織は脳だ。
2人がいなけりゃなんも表現できねえし動けねぇ。
お前らがいてやっと、俺は俺でいられる。」
そう言ってけんちゃんは手を下ろす
万次郎が笑ってるとこをみると、2人も手を繋いでいるんだろう
「ケンチンがそんなこと言うの珍しいね。」
『本当ね。』
「喧嘩してたからな。
多少思うとこあったんだよ。」