第1章 Blanc
圭くんの家に行ってから、何日経っただろう。
『…』
相変わらず私はおばさんから受け取った紙の番号を押せずにいる。
…これを押してしまったら、圭くんが本当に死んでしまったことを受け入れなくてはならない気がして、まだ勇気が出なかった。
現実逃避をする様に、この数日間は部屋の片付けに没頭し、1週間はかかるだろうと覚悟していた荷解きもほんの3日で終わってしまった。
新しい職場の初出勤までは後4日。
そろそろ、私も覚悟を決めなくてはいけない。
そう思い、手始めに調べてみることにした。
この番号に掛けて、いきなり現実を突きつけられるより、少しは自分で知っておいた方が相手にも迷惑をかけないし、何より耐えられる気がしなかった。
おばさんは圭くんは喧嘩の最中に刺されたと言っていた。
けんちゃんが亡くなった時も私は側にいなかったけれど、まるで彼のような亡くなり方に疑問を隠せない。
…そういえば、けんちゃんが亡くなった日と同じ日だって言ってたな。
当時、けんちゃんの事件はニュースになっていたから、圭くんの方も何か記事が残ってるかもしれない。
ひとつ息を吐いて、検索を掛ける。
【2006年8月3日 中高生暴走族グループ乱闘事件 少年1人が死亡する事態に】
『っ、これ、』
震える指でその記事を開く。
その記事によると暴走族グループ2組が抗争をしてその中で1人の中学生が刺されたとのこと。
未成年ということが大きく、正直これだけではほとんど何もわからない。
ん?このリンク…
未成年だから、と、圭くんの名前はもちろん、主犯の名前もわかっていない。
しかし、下の方のリンクには東京卍會の文字。
『どうして東卍の名前が…』
相手の暴走族グループの名前は出ていない。
東卍だけが名前が出てる。
でも、どうして?
私はそのリンクをタップして別のページへ飛んだ。