第6章 Infighting
ピンポーン
「…はい」
『あ、私、伊織です』
「!す、すぐ開ける!!」
大きな一軒家
少しだけ待つと、慌てたように彼女が出てくる
「伊織!本当にまた来るなんて…!」
『約束したからね。
今日八戒くん居ないでしょ?だから来たの。大丈夫だった?』
「大丈夫だけど…」
『じゃあお邪魔します。』
みんなには絶対に言えないけど、これも私にしか出来ないこと
いつけんちゃんが狙われてもおかしくない今、本当に急いで手に入れなければならない
『柚葉、今はあんまり怪我無いわね』
「うん…伊織が私の友達だから殴られる頻度が大分減って…
機嫌がクソほど悪い時以外は最近殴られないの。」
『よかった。
…紙とペン借りていい?訳すから』
「わかった。
本当、ありがとう。」
『ううん。
私も勉強になるし、ちゃんとお礼も貰うから別にいいよ』
柚葉の表情が前よりも少し明るい
こんなことで彼女の負担が減るのなら、最初からこうしてあげればよかった
「帰ったぞ…」
「っ!大寿…」
『あ、お邪魔してます。』
「…来ていたのか。
それなら丁度いい。」
3冊ほど訳し終えた頃、黒龍の特攻服を身に纏った大寿が帰ってきた
そして私に向かいに座るように促すと、1枚の紙を差し出した
「…この程度のものなら持ち出せるらしい」
『ちょっと見せてください…』
「…」
やっぱり腐っても病院
そう簡単にホイホイ持ち出せる訳じゃ無い、か
正直言って足らないが、最初からあまり求めすぎると疑われる
あくまで私は医療に興味のあるただの中学生
初めて見るはずの医療器具にワクワクしたような視線を向けなくてらならない
『!すごい!!
ありがとうございます!』
「…明日には届く。
柚葉にでも預けておくから取りに来い。」
『はい!』
それだけ言うと、私が先程訳し終えた本を小脇に抱えてリビングから出て行った。