第6章 Infighting
「俺だって、パーが捕まるのは嫌だ。」
空が茜色に染まってきた頃、けんちゃんはやっと重たい口を開いた
『…うん』
「無罪に出来るならしてやりてえ。
これまで通り、一緒に馬鹿やって喧嘩して飯食って、、、そんな生活を続けたかった。」
『…』
きっとそれは誰もが望むこと
私も12年前はいつもそう思ってた
…本当に、、、どうして人は失う前に大切なことに気づけないんだろう
どうして、幸せで平凡な時間が永遠に続くと、そう勘違いしてしまうんだろう
「…分かってんだ。頭では。
でも、お前の言うとおり気持ちが追いつかねえ。
それなのにマイキーは思いっきり俺にぶつけてくる。
…つれえんだよ………もう…」
『…』
「いつもなら多少思うとこあっても受け流せるけどよ、今は無理なんだ…」
けんちゃんはそう言って頭を抱える
…吐き出す場所が彼には無かった
彼のように、人の気持ちを受け止めてあげられる人が彼の周りにはいなかった
そしてけんちゃん自身が話そうとしなかった
副総長という肩書きが、それを邪魔していた
「でも、1番許せねえのは自分なんだ…
あの時、俺が1番近くにいた。長内は俺が掴んでいた。
それなのに、気づけなかった。
パーを止めることが出来なかった。
…それが1番後悔してるんだ。」
『っ』
「俺が、あの時前を見てれば防げたはずなのに…
俺のせいでパーは捕まったんだ。」
けんちゃんはそう言いながら自分の手を見つめ、握りしめた
『…けんちゃん、それは違う。
あの状況で1番パーちゃんを止められたのは、私よ…』
「…」
『私はパーちゃんの傷を診てた。
それなのに、彼が目の前からいなくなったことに気づかなかった。
…けんちゃんがそこに負い目を感じることはない。
あれは私が、』
…そう、私も今、死ぬほど後悔している
私が彼から目を離したから
目の前の患者から注意を逸らしたから
だから、あんなことになったんだ