第6章 Infighting
『けんちゃんがやったことはひとつも間違えてない。
でも、ひとつ違うところがある。』
「…なんだ」
私たちは前を向いて、視線を合わせることなく続ける
お互いにわざわざ表情を見なくても、どんな顔をしているのかくらい容易に想像がついた
『万次郎だって、パーちゃんの覚悟は分かってるよ。
ただ…受け入れられなかったんだと思う。』
「…」
『けんちゃんだって、口ではそう言ってても辛いでしょう?
そう言っているからこそ、苦しいでしょう?』
「…俺は、、、」
『…当たり前だよ
こんなこと、簡単に受け入れられる人なんて居ない。』
万次郎はけんちゃんみたいに大人になりきれなかった
でも、けんちゃんだって大人なわけではない
けんちゃんだって万次郎みたいに嫌なものは嫌だとさらけ出して誰かにぶつけたいはずだ
だからこそ万次郎を見ていると余計に腹も立つんだろう
『けんちゃん、私たちはいつもけんちゃんの大人な部分に甘えてきた。
今もそう。万次郎は貴方に完全に甘えてる。
だから、けんちゃんも本音を吐き出していいんだよ?
私だってけんちゃんの拠り所のひとつになりたい。
キツいときくらい、相手のことなんて考えずに思いっきりモヤモヤしてることぶつけてよ。』
「…」
そこまで言うと、私はけんちゃんが話し始めるのをひたすら待った
話したくないと言うのならそれでも構わない
私はただ、隣に座って待った