第6章 Infighting
『だから聞きたい気持ちは山々だけど、今は押し殺すわ。』
私はそう言って海に視線を投げる
「伊織1個だけ信じてくれ」
たかちゃんの声が鼓膜を震わせる
『なに?』
「お前は絶対に東卍に必要だ。
そして何より、、、俺たちに必要だ。
理由言えねえのに信じろってのも無理な話かも知れねえが…たとえ今マイキーとドラケンが普通だったとしても、お前がいなくなったら東卍は成り立たねえんだよ。
だから、、、頼む、」
たかちゃんはそう言って私に頭を下げた
その光景が信じられなくて、咄嗟に声が出なかった
『っ、やめて!
いいから、、顔上げてよ…!!』
「いや、俺たちはそれだけお前に負担かけてんだ。
これでも足りねえくらい…」
『わ、わかったから…
お願い、そんなことしてほしくない、
私は…』
不良が下げる頭は決して軽くない
そんな風に下げていいものでもない
ましてやたかちゃんのようにちゃんと意味を理解してる人が…
『そこまでたかちゃんが言うなら信じるから…
もういいよ』
「…ごめんな、、本当に」
『いいって…』
気まずい空気が流れるが、私はまだ一番伝えたいことを伝えられてない
少し2人の近くに歩み寄り、静かに口を開く
『万次郎とけんちゃんの喧嘩によるこの内部抗争。
ずっと引っかかってることがあるの』
「あん?」
「…どういうことだ?」
『早すぎるのよ…何もかもが』
まだパーちゃんが捕まって数日
2人の喧嘩はまあいいとして、それによる隊員への波紋が広がるのが早すぎる
こんなに早く派閥ができあがるわけがないんだ
2トップが喧嘩してしまったら、最初に訪れるのはまず混乱
それもここまで大きな喧嘩なら尚更混乱は大きい
それから自分の立ち位置を見直してどこに着くのか決める
そうしてやっと集まった人同士で派閥ができる
おまけにこの時代はそんなに通信機器が発達してないから情報が末端に伝わるのにも時間が掛かる
それなのに今、実際に小競り合いまで起こる事態に発展してる
このスピードは明らかに異常だ