第1章 Blanc
「…あの子の最後は詳しく聞かなかった。
最後を看取ってくれたのは千冬くんだったの。
千冬くんは今でもお墓参りに行ってくれて、何年かに一度、ふらっとウチに来て線香を上げてくれるの。」
『…』
「…あの子が生きてた時は、三ツ谷くん達の話もよく聞いていたけど、あの子がいなくなってからはそっちの話に疎くなって…
千冬くんにも尋ねなかった。」
千冬くん…
圭くんが1番信頼を置いていたひとつ下の後輩。
圭くんの後ろをいつも着いて歩いてたのを朧げながら覚えてる。
「…あの子のお葬式の日、千早くんが私に預けてきたものがあるの。」
おばさんは立ち上がって、缶の中にしまってあった一切れの紙を私に差し出す。
それの端には赤黒いシミが付いていた。
おばさんは視線で開いて見るように言う。
私はその紙を開くと、そこには圭くんの文字で11桁の数字が書かれていた。
「千冬くんが圭介から預かったものらしいわ。
圭介曰く、それは伊織ちゃんに渡して欲しいって。
多分誰かの携帯番号だとは思うけれど、、、
あの子は伊織ちゃんがここに来るって約束、信じてたのね。」
『…圭くん…!!』
「それで実際、貴方はここに来てくれた。
ありがとう。」
私はさっきので枯れたと思っていた涙を再び流した。
おばさんもハラハラと涙を溢れさせ、2人で空が暗くなるまで泣いていた。