第5章 Cause
『あ、』
「ぇ、、、なんで、伊織さんが…こんなところに」
顔を青ざめさせ、信じられないものを見るように私の顔を見る彼
それもそうだろう
ここは彼の家から出てすぐだし、この辺りが黒龍のナワバリであることを私が知らないはずがないと分かっているから
と、彼の身体がだんだん震え始める
『八戒くん、大丈夫よ。
一旦落ち着いて…少し話そうか?』
「は、はい…」
私はそのまま彼を公園に誘導し、自販機でお水を買って渡した
「…ありがとう、ございます」
八戒くんはそう言って受け取るも口をつける様子はない
…混乱してそれどころじゃないんだろう
そうだよね…八戒くんの事情は知ってるけど、そのことを八戒くんは知らない
『まず…私は八戒くんの状況はずっと前から知ってた。』
「!?」
『個人的に柚葉と友達だったから…東卍とか黒龍とか関係なく出会ったの。
だから、柚葉も私が東卍であることは知らないわ』
隣でベンチに座っているだけなのに、八戒くんの心臓の音が聞こえてきそうだ
渡した水のペットボトルを握りしめ、反対の手も膝の上で硬く握り混んでいる
その手にそっと自分の手を重ねると、八戒くんは大きく肩をふるわせた
『大丈夫、大丈夫だから…
一旦深呼吸して』
「…あ、あの、、俺は、、、」
『うん』
「俺は、、、」
『…』
八戒くん、凄く震えてる
そりゃ急に秘密を知られたと知って、混乱しない人間はいない
それに、一体何を知られて何をまだ知らないのか
それすらも分からないから、何から話したら良いのかも分からないんだろう