第5章 Cause
「…お前、教えを信じる者か」
『信仰は別にしていませんが、知識だけなら学んだことはあります』
「…主の言語はわかるのか」
『完璧に、とは言えませんが』
「…そうか」
そう言うと、大寿は本棚に並ぶ本の背表紙を指でなぞった
「高宮、とか言ったな」
『はい』
「…頼みがある」
『なんですか?』
「…ここにある本を、、、できる限り訳してもらいたい。
金は弾む」
「!?」
驚いた
思っていた以上に信仰心が強いようだ
普通なら全てを理解したいとは思わないだろう
それに、今は一般人としてここにいる私なんか一瞬で捻り潰せるだけの力を持つ大寿が頼み事だなんて
それも命令ではなく、お金を払ってまで…対価を出すほどまでのこととは
…これは使わない手はないな
『いいですよ。
ただ、お金よりも欲しいものがあります』
「…言ってみろ」
『医療器具が欲しいです。
あ、そんなに大きな声で言える理由ではないんですけど、、、私将来医者志望で…救命医になりたくて…
だからその、、ドラマとかで見た奴を触ってみたくて…』
「…」
『やっぱり、難しいですかね?』
いや、コイツからしたら全く難しくは無いはずだ
柚葉の話ではあの病院を完全に黒龍は落としてる
そこから引っ張ってくればいい話
だがやはり腐っても病院だ
完璧なほどの道具は揃わないだろうが…少しでもあることないのとでは選択肢に雲泥の差がある
さぁ、乗ってくるか
「…容易い」
『!ありがとうございます!!』
よし…!!
これで医療器具はちょこちょこ手に入るだろう
「…期待している」
『はい』
私はそれから少しの本を訳してから柴家を出た
知識はお金じゃ買えないからな
これで柚葉への暴力も多少は減るはずだ
一般人で翻訳のできる私が手を出されることもないだろう
自分の価値を相手に合わせるのは得意な方だ
…でも、柚葉を傷つけたのは許さない
その分気兼ねなく利用させてもらおう、柴大寿