第5章 Cause
「でも、私は…「帰ったぞ」
『!』
「!?た、、、大寿!?」
「あん?なんだ柚葉そのガキ…お前の客か?」
…デカイ
けんちゃんよりも遥かに
高校生の体格じゃない…プロレス級だ
「そ、そうよ
私の友達…偶々近くに来てたみたいだから、、、
…それより、今日は帰らないんじゃ」
「ああ?自分家に帰るのに妹の許可が必要か?」
「や、そういう訳じゃ…」
…これが柴大寿
圧倒的な力を持つ黒龍総長、そして柴家長男
『こんにちは、はじめまして。
高宮伊織と言います。』
「…柚葉の兄の大寿だ。」
『お邪魔してます。』
「…」
…相手が一般人、そして自分の風貌を見てもビビらないからか、思ったより反応が激しくない
ただ、その代わり視線の中に混じった隠す気のない疑心が胸を刺す
…まさか私も出くわすとは思ってなかった
万次郎との関係を勘づかれたら終わりだ
ただの女子中学生を演じなければ…
『…あ』
「…なんだ」
『あ、いえ、、、』
「言え」
『…そのタトゥー、、、ギリシャ語、ですか?』
「…」
『あ、深い意味はなく、、、珍しいな、と思って…』
思わず口から出てしまった
お腹の辺りにあるタトゥー、ふと目を向けたら英語ではなかった
絵でも英語でもないタトゥーを彫る人はなかなかいないからな…
「…読めるのか」
『多少は』
「そうか」
それだけ言うと、大寿は本棚から一冊の本を取り出してソファに座る
…すごい
この本棚ほとんど聖本だ
…そのなりで信仰してるのか、、、
『…コレ、逆ですよ?』
「あぁ!?」
「伊織!そこは触ったら…!」
『…年代順に並べてるんですよね?
この出来事が起こったのはその本の前、だから、逆です』
背表紙に書かれた題材を見てそう言う
アメリカにいるときも結構目にしたからなぁこういう本
少し勉強した記憶もある
大寿はソファから降りて、本棚の前に立つ私を見下ろした