第1章 Blanc
「…9年前の夏。
あの子が中学3年生だったから、あなた達は高校1年生の頃、喧嘩の最中に刺されたと聞いてるわ。」
『…』
「奇しくも、その日は丁度1年前、貴方達と仲の良かったドラケン君が亡くなった日と同じだった。
…会ってあげて。」
おばさんは後ろの襖を開くと、そこには10年前の圭くんの部屋。
本の場所も家具の配置も変わってなくて、ただ一つ。
部屋の隅に置かれている仏壇だけが変わっていた。
「何年経ってもね、この部屋だけは触れないの。
あの子が過ごしてきたこの場所を変えたくなくて、変えてしまったらあの子がいたことが夢だったんじゃないかって、そう思ってしまうのが怖くて。」
『…嘘、、、圭くん…が、、そんな、』
「…2人で、話してきて。」
パタン
襖が閉まる音が聞こえた。
足に力が入らなくて、思わずその場にへたり込む。
『…圭くん、、どうしてっ!!』
圭くんが死んだ?
もう、会えない?
真兄も、けんちゃんも、、、圭くんもいない?
そして何より、
私は9年間も、それを知らずにのうのうと生きてきたの?
『…っ、あ、、、あぁ!』
ごめん、
ごめんね、圭くん、、、
貴方が痛くて苦しい時、知りもしないで、側にも居てあげられなくて、ごめんね、
勝手に連絡を絶って、貴方の辛い時にも寄り添う手段を失わせてしまってごめんね、
声を上げて泣いた。
悲しくて、悔しくて、自分が許せなくて、
嗚呼、でも本当にもう居ないんだ。
私が泣いていたら真っ先に気がついて、いつも1番に不器用に慰めてくれていた。
これだけ泣いても、貴方はもう乱暴に涙を拭ってはくれない。
『っ、うぅっ、、、ズッ、、』
痛い、
胸の奥が、痛い。
こんな思いを二度としないために、みんなにさせないために医者になったのに、
私は結局、誰も救えてない。
圭くん、、、