第5章 Cause
『あー…これ折れてるね、、、
痛かったでしょう?』
「…別に」
『嘘おっしゃい
私の前では我慢しないって約束よ?
誰にも言わないから、ね?』
「…ぅん」
左手の小指を薬指と共にギプスを当てて固定する
利き手じゃなくてよかった
『ほら、顔の傷も…
大丈夫、傷ひとつ残さないから。
それに柚葉、弟くん守るのはすごく偉いことだけど、本当に苦しくなったらいつでも連絡して。
そしたら必ず助けに行くから』
「…っ、うん、」
『…何回も言ったかも知れないけれど、、、慰めなんかじゃなくて、私は本当にいつでも柚葉を助けられる。
もちろん弟くんも一緒に。
だから、本当はすぐにでもここから連れ出したい』
「…」
『でも、柚葉がそれを望まないのなら、無理強いはしない。
だからせめて、覚えておいて。
逃げ場がなかったら私が作ってあげる。柚葉と弟君が心を決めて、私の手を取る勇気が出たら必ず連絡してきてね。』
「…っく…、、あ、り、がと」
『うん。
さ、柚葉おいで』
「ん!」
全ての傷の治療を終え、私が手を広げると柚葉は小さくなって私の腕の中に入ってくる
そして声をひとつも上げることなく、震えるように泣くんだ
大きな猛獣から怯える小動物のように
寒さに凍える小鳥のように
ただ目をつぶって、その脅威が去るまで