第5章 Cause
エマはしばらくそう言いながら肩を震わせていた
精神的に大人、か、、、
この時期の普段の私はどうか知らないが、少なくとも今の私は27
そりゃ今の私と一緒にはなれないよ
そう内心苦笑しながら、私はエマに問いかける
『エマ、本当は怖かったでしょ?』
「っ、はぁ?何が…っ」
『タケミっち誘うのも、服脱ぐのも』
「っ!!そんな訳!ないし…」
『そんなわけある。
好きでもない人の前でそんなこと、普通できない
初めてなら尚更』
「っ、、、」
その証拠に、タケミチ君を見てからのエマ、少しだけ震えてた
…エマだって怖かったんだ
それでも、その恐怖よりもけんちゃんと同じ位置に立とうとする想いが勝った
…中学生でここまで人を好きになれるのは、本当にすごいこと
その辺の大人よりはずっと大人だ
『けんちゃんはともかく、エマがそんなことして絶対に悲しむ人が他にも2人はいるんだよ。』
「ズッ…だれ」
『私と万次郎。
私はエマのことが大好きだし、万次郎はきっと私の何倍もエマのことを大切に思ってる。』
「っ、まいき、が?」
『そうよ。だからエマ、お願いだから自分のことを大切にして。
自分のことを大切に思えない人は、いつまで経っても他の人を大切には思えないわ。
けんちゃんを想うことの第一歩は、自分のことも同じくらい想うこと。
わかった?』
「…わかった、、、
…ごめんなさい、伊織…」
『うん。
じゃあ今度からは私がけんちゃんをときめかせるのに協力してあげる。』
「っ!本当!?」
『ええ。約束する。
だからもう、2度とこんなことしちゃダメよ?』
「うん!伊織大好き!!」
『私も大好きよ、エマ』
私に思いっきりぎゅうっと抱きつくエマ
それを両手で受け止めると、エマの肩越しにこちらをじっとみつめるけんちゃんを見つけた
私はけんちゃんに向けて笑顔を作ると、けんちゃんは口パクで私に一言伝えてほっとしたように笑った
「あ、り、が、と、う」