第14章 【第十三訓】ベルトコンベアに挟まれた工場長の話
「近藤さん! しっかりして下さい、近藤さん!」
布団でうなされている近藤を、○○達は取り囲んでいる。
幽霊騒動は局長である近藤にまで被害を及ぼした。
「死んじゃったー!」
「死んでませんよ。死んじゃ嫌だっていう場面ですよね。ていうか、死にません」
新八は冷静にツッコミを入れる。
十八人、近藤で十九人の被害者は出たが、誰一人として命は落としてはいない。
幽霊なんていう存在はとても信じられるものではない。だが、この事態は尋常ではない。
「早期解決!」
○○は大幣を取り出し、近藤の顔を叩いた。
「悪霊退散ー!!」
キエェェェー! と奇声を発しながら、何度も何度も紙垂を振りかける。
「アホらし。つき合いきれねーや」
銀時は面倒臭そうに呟くと、おもむろに立ち上がった。
右手に神楽の左手、左手に新八の右手を握り締めて。
「銀さん……」
みんなの疑いの目が集中する。
「あっ、赤い着物の女!!」
沖田が声を上げると、銀時は襖をぶち破って押入れへと飛び込んだ。
疑いは確信に変わる。
もう一人、沖田の声に反応した男がいた。
土方は壷へと頭をつっこんでいた。
銀時にあびせられていた冷ややかな視線は二つに分断される。
「なんだ、そのさげすんだ目はァァ!!」
二人が声を揃える。
態度で示された以上、何を言っても覆すのは不可能。
四人が四人とも、白けた瞳で銀時と土方を見つめた。
だが、その目が徐々に見開かれていく。
○○が、新八が、神楽が、沖田が、二人の背後に目を集中させる。
「ぎゃああああああ!!」
銀時と土方の背後にあったものを見た四人は、一目散に駆けだした。
「オッ……オイ!! ○○まで!!」
銀時の声が○○の背に届く。