第14章 【第十三訓】ベルトコンベアに挟まれた工場長の話
「うちの食卓は○○なしじゃ成り立たねーんだよ! 総悟がイタズラで作った変な料理を見抜けるのも○○だけだし、俺だって好き嫌いがないわけじゃないしさァ! ○○しか俺等の嗜好を把握してくれてねーんだよ!」
「てめーは飯に関することしかねーのか!」
土方の怒鳴りなど近藤の耳には届かない。
「俺ァ、○○が独り立ちして生きていけんなら、それでいいんだよ。そもそも、屯所に置くことは反対だったからな。だが……」
眉間に皺を寄せると言葉を荒げた。
「なんで万事屋だ! 他に稼げる所があんだろ!」
「あーあー、何も聞こえませーん」
○○はムスっとした表情のまま、耳に手のひらを当てている。
「まさか、○○が真選組にいたなんてな」
縁側から聞こえて来た声に三人は振り返る。
頭を押さえながら銀時が近づいて来た。
脳天に溜められた血は、絶賛、体を降下中だ。
隣には同じような気だるさを見せている神楽と新八。
その横には飄々とした沖田が並んでいる。
縛られたままの格好で銀時達は○○のことを沖田から聞いた。
門の前で拾ったと、メイドとして扱き使っていたと、沖田による沖田のための脚色を含めて。
「まァ、こんなむさい所、飛び出す気持ちはわかるけどな」
ププッと笑いながら、銀時は口元を押さえる。
その視線は沖田でも近藤でもなく、土方を捉えている。
「何だと」
「別にィ、お子様のお守りは、さぞ大変だったんだろーと思いましてねェ」
土方は額に怒りマークを浮かべながら銀時に詰め寄った。
一触即発かと思われたが、今日は珍しく土方が折れた。
今は真選組の危機。挑発に応じている場合ではない。