第14章 【第十三訓】ベルトコンベアに挟まれた工場長の話
「というわけで、私は今、万事屋で働かせていただいております」
畳に正座し、○○は淑やかに言葉を落とす。
目の前にはあぐらをかいた近藤。
土方は障子の桟に凭れて立っている。
屯所を出たあと、○○は万事屋で働き始めたことを伝えた。
ただし、○○の過去を銀時が知っているということと、万事屋で暮らしているということは伏せている。
近藤と土方の万事屋への態度、真選組をカモと嘲笑っていた銀時。
彼等の間に確執のようなものが見て取れる。
全て話すと面倒なことになると、○○の第六感が教えている。
「なんでよりによって、あんな胡散臭い所で働いてんだよ!」
近藤は両手で顔を押さえて嘆いている。
首を左右に振り、幼児が嫌々をする仕草を見せる。
「確かに胡散臭いけど」
○○は銀時達に目を向けた。
銀時、新八、神楽の三人は縄でグルグルに巻かれ、木に逆さ吊りにされている。
指揮を執るのは沖田。
楽しそうに拷問紛いのことを繰り返す。
「依頼された仕事はそれなりにこなしてるよ。私もちゃんと一員として扱ってくれてるし」
○○は冷ややかな目を土方に向けた。
「頼むから帰って来てくれよ! 毎日退屈させないように、朝昼晩の献立作りとかさせてやるからさァ!」
「だからそれ雑用でしょうがァァ!」
「○○がいたらさァ! マヨネーズが足りねーなんつー事態にもなってなかっただろーしさァ!」
喚く近藤の声を、○○は耳を塞いで拒絶した。