第14章 【第十三訓】ベルトコンベアに挟まれた工場長の話
「ちょっと待って!」
小さいながらも鋭い声を上げると、○○は銀時の腕にしがみついた。
「警察はマズイでしょ。警察に詐欺はマズイでしょ」
○○の説得にも銀時は応じず、楽しそうな声音を浮かべる。
「いやいやァ、あの能なし警察なら、ちょろいもんだろ。いろいろデマ言ってビビらせてやらァ、ガッポリだぜ」
銀時は親指と人差し指で丸を作る。
金貨ガッポガッポ。むしろ、札束バッサバサ。
「ダメだってば、警察は!」
必死に食い下がる○○を見て、銀時は首を捻った。
いつもの○○なら、相手が警察だろうが、政治家だろうが、将軍だろうが賛同しているはずだ。
ここまで止める理由がどこにあるのか。
「てめー、まさか」
包帯の隙間から覗いた瞳が鋭さを見せる。
「こっちに来る前、真選組に厄介になってたのか? 何したんだ? 窃盗か? 殺人か? まさか、その年で援こ――ぐおっ……!」
○○は銀時の腹部に肘鉄を食らわせ黙らせた。
「何してるんですか」
山崎は振り返って声をかけた。
後ろをついて来ていると思っていた四人がまだ遥か後方にいた。
「早くして下さいよ。このままだと、真選組が壊滅しかねません」
溜め息混じりに吐き出された山崎の言葉に、○○は耳を向けた。
(真選組が……壊滅?)
一体、真選組で何が起きているのだろう。
山崎は目の前にいる虫の垂衣を被った巫女姿の女性が○○だと気づく気配はない。
太刀捌きさえ見せなければ、土方も気づかないだろう。
真選組の現状を知りたいという思いが、○○を屯所へと向かわせる。