第14章 【第十三訓】ベルトコンベアに挟まれた工場長の話
「明らかに違うでしょ! 騙して金ふんだくろうとしてるだけでしょ!」
「ごちゃごちゃうるせーな。じゃあ、てめーが今月の家賃払えや」
「そうだよ、新八君、払えるの?」
「何それ! なんで僕に責任が転嫁されてるの?」
一時衝突しつつあった○○と銀時は結託。
人畜無害、だが人の害は受けやすい新八へと矛先を変えた。
依頼がなければ、自らの手で生み出すまで。
今晩までに依頼がなければ、○○を主役とした万事屋怪談の幕開けが決定しつつあった。
だが、そんな茶番劇はあっという間に開く機会を失った。
「すいません。拝み屋の方とお見受けします」
一人の男が四人に声をかけた。
厚手の垂衣は互いの顔を見えなくしている。
だが、全身黒色の服装とその声で、○○には相手が誰だかすぐに認識出来た。
(げ! 山崎!)
声をかけて来たのは、真選組監察である山崎だった。
山崎は、自分は真選組隊士だと名乗ったあと、拝み屋の噂を聞いて捜していたと言い出した。
「実は、出るんです。それを祓っていただきたくて」
山崎の話によると、現在半数以上の隊士が寝込んでいる状態だという。
その原因がどうも幽霊にあるようだと。
「報酬は出るんだろーな」
「もちろんです。内密にしていただけるのなら、より多くの額を提示しても構いません」
○○以外の三人の目が怪しく光る。
「では、早速現場を見せてもらいましょーか」
「そーですね」
ニタニタとした口元。粘っこい声色。
カモだ、カモが引っかかったと、心の中で三人ともがニマリと笑っている。
だが、○○はそうはいかない。