第12章 【第十一訓】鎖国解禁二十周年祭りの話
「……はァ」
道中に立てられた手配書を見て、○○は溜め息を吐く。
源外の風貌を描いた絵の下に『この顔にピン!! ときたら110番』という文字が書かれている。
鎖国解禁二十周年記念の祭りで騒ぎを起こしたのは源外だったと、○○はあとで銀時に聞いた。
カラクリの群れを見てまさかとは思ったが、やはり源外の仕業だった。
「あんなに綺麗な花火を打ち上げた三郎が、爆発の元凶だったなんて」
○○は肩を落とす。
三郎を始め、カラクリを直す作業を○○は手伝った。
知らなかったとはいえ、元真選組がテロの片棒を担いでしまった。
源外の息子は攘夷戦争に参加し、幕府に粛清されて曝し首にされたという。
その敵討ちのために源外は将軍を狙った。
「……はァ」
○○は溜め息を吐きながら『大江戸ストア』へと向かった。
大江戸ストアの袋を手に、○○は元の道を万事屋へと帰る。
手配書が見える場所まで戻って来ると、二人の男の姿が目に入った。
同じような笠を被った二人の男。彼等は手配書に目を向けていた。
○○は男のうちの一人、煙管を手にした派手な着物の男の腰に注視した。
廃刀令のこの御時世に刀を差している。
視線の先には源外の手配書。
攘夷志士――という言葉が○○の脳裏をよぎる。だが、帯刀しているだけで攘夷志士とは限らない。
すぐ身近に木刀を持ち歩いている男がいる。
男は○○の方へと歩いて来た。
笠を目深に被っているため、顔は見えない。同様に男にも、○○の顔は見えていないだろう。
――二度………前に…………じゃねェ
すれ違うと、○○は振り返った。
その背中は、徐々に遠ざかって行く。
○○は首を傾げる。何だか、妙な感覚だ。
「あれ? ○○さん」
名前を呼ばれ、○○は振り返った。そこにいたのは新八だった。
彼は○○が手に持った大江戸ストアの袋に目を向けた。
「夕飯の買い物ですか?」
「うん。新八君は?」
「僕も大江戸ストアに行く所です。姉上に買い物を頼まれまして」
話しながら、○○は新八の背後に目を向けた。
もう一人の男、錫杖を持った僧侶風の男の姿は既になかった。