第12章 【第十一訓】鎖国解禁二十周年祭りの話
「お、先客がいる!」
激戦区にたどり着いた時、真選組の面々の中で、一人だけ関係のない人物が混ざって戦っているのが見えた。
その名は、神楽。
「負けてらんない、うらァァァ!」
変装しているため、正体がバレるはずがないと、○○は飛び込んだ。
だが、その姿を一目見た土方は声を上げた。
「な……! てめー、○○か!?」
「ななななにを言うか! 私はただの通りすがりの助っ人じゃァァァ!」
○○はあくまで別人を貫き通す。
○○は今、目だけを出し、顔全体に布を巻いている。
広げればそこに『焼そば』と書かれた文字が読めることだろう。
屋台の屋根の部分に使われている、厚い布。
いつかのふんどし仮面なんかよりも、余程、素顔を隠している。
「アホ言ってんじゃねェ! 太刀捌きでわかん、だよ……太刀捌きでいいのか?」
○○の手に握られたものを見て、土方は眉間に皺を寄せた。
刀の代わりにされているのは、食べ終わったとうもろこし。
「チッ!」
カラクリを斬り払いながら○○に近寄るも、敵の多さに土方はなかなか前に進めない。
逆に○○は、土方から遠ざかるように飛び退きながら敵を倒す。
「○○、テメェ! 逃げてんじゃねェ!!」
「何を言っておるんじゃァ! 逃げたりなんかしてないぞ!!」
明らかに逃げながら、○○は声を上げる。
「ていうか、そろそろ限界かも」
とうもろこしの芯が、どんどんとボロボロになっている。
すっかり脆くなり、あと何回、刀の代わりとして振れるかわからない。
布の重さで首も限界だ。
「さよーなら!」
「待ちやがれ!」
「待ちやがらねェェ!!」
ここでも逃げ足の速さを発揮し、○○は土方から逃げ遂せた。