第12章 【第十一訓】鎖国解禁二十周年祭りの話
「思った以上に人が多いなァ……」
仕事を終えた○○は、会場であるターミナルへとやって来た。
見渡す限りの人、人、人。
これでは、銀時達を見つけるのに時間がかかりそうだ。
落ち合う場所すら決めずに先に向かった新八も、ここまでの人出は予想していなかったのだろう。
人混みを掻き分け、屋台に挟まれた道を歩いて行く。
りんご飴、綿あめ、焼とうもろこし。
美味しそうな匂いが漂う。
よだれが垂れる。
「おっちゃーん! 綿あめ一つ!」
「はいよー」
○○は銀時達を捜すより、食欲を優先した。
食べながらその姿を捜して歩くが、人の群れよりも屋台に目が向いている。
もはや、美味いもの捜しがメインになっている。
空には星が輝いているが、ターミナルから放たれる光と、屋台と提灯の明かりで辺りは煌々としている。
今が夜だということも忘れ、○○ははしゃぐ。
「んー、美味しい」
焼とうもろこしをかじりながら歩く。
食べ歩きは祭りの醍醐味。
そしてもう一つ、この祭りには醍醐味がある。
ドン、パァンという音と共に、夜空に一輪の花が咲く。
平賀源外によるカラクリショーが始まった。
「たーまやー」
二輪三輪と、光の花が開く。
「なかなか傑作じゃない。私の花火」
手伝いを早々にバックレた者の台詞とは思えない。
我が子を慈しむように花火を見つめる。
その笑顔は、次の瞬間に凍りついた。
ドォンという音と共に、土埃が舞い上がる。
「テロだ! 攘夷派のテロだァァ!!」
笑顔で溢れていた会場に、恐怖の声が飛び交う。
爆発の起きた方から逃げる人々が、○○の肩をかすめて走り去る。
「テロだとォォ!?」
真選組を自主脱退したとはいえ、攘夷浪士に対する敵愾心は消えていない。
駆けつけたくて体がうずく。
だが行けば、近藤や土方らと出くわす可能性が大ありだ。
祭典に将軍が参加するならば、真選組の面々が要人警護にあたることは必定。
将軍のいる場所に近づきさえしなければ、出くわすことはないだろうと踏んで祭りへやって来た。
しかし、こうなったら行くしかない。
○○はあたりを見回した。
「……これだ!」