第12章 【第十一訓】鎖国解禁二十周年祭りの話
「いらっしゃいませー」
カランコロンと扉が開く音が聞こえ、○○は振り返った。
「あれ? 新八君」
「○○さん、お祭りに行きましょう!」
源外さんがお金をくれましたと、新八は言う。
「カラクリの修復作業、間に合ったの?」
「はい、どうにか」
鎖国解禁二十周年記念の祭典当日。
源外のカラクリ修復作業はまだ続いていた。
万事屋一同もお登勢に言われて手伝わされていたが、○○は最終日を前に作業からはイチ抜けた。
理由はアルバイトだが、間に合わなかった場合、私ァ関係ねェとシラを切って切腹を免れるための口実でもある。
「銀さんと神楽ちゃんは先に行っています」
あの二人がわざわざ出向くはずもなく、新八だけが○○を呼びに来た。
それに銀時は、○○がバックレたことに薄々感づいていたため、美味しい汁だけ味わわせることは癪だった。
「お祭りかァ……」
表は夕暮れの色に染まって来ている。
花火が上がる頃には、辺り一面真っ暗だろう。
「お祭り、嫌いですか?」
○○の顔には難色が表れている。
「ううん。嫌いじゃないけど」
ただ、夜が怖い。
そもそも祭りという催し自体に参加したことがない。
今回のように盛大な祭典ではないが、真選組に身を置いてからも、毎年夏には祭りが開かれていたはずだ。
一人では行こうと思わず、誰に誘われることもなかった。
「それじゃあ、行きましょう。銀さんと神楽ちゃんも待っています」
「うん。仕事が終わったら向かうから、新八君は先に行ってて」
「はい」
新八は一足先に祭り会場へと向かった。