第12章 【第十一訓】鎖国解禁二十周年祭りの話
「次、私歌わせてヨ」
「カラオケ気分ですか! ズルい! 次、私!」
神楽が歌い手に立候補したのに便乗し、○○も手を挙げる。
「○○さんまで! マイクは渡しませんよ!」
「私もお通ちゃんの歌、歌うんだから!」
「え、それなら……」
「何、贔屓してるアルか! 軟弱アイドルより、北島五郎に決まってるネ!」
「軟弱だとォォォ!」
三人のマイク奪い合いは、激化の一途をたどる。
「マイク持って来たの私なんだから、私のマイクなんだから!」
「一番軽いもん選んだだけでしょ! ズルい○○さんに神聖なお通ちゃんソングは歌わせません!」
「何をォォォォ!!」
「オイぃぃ! 次、歌うのは俺だぞォ!!」
「てめーらの歌きくぐらいなら自分で歌う!」
本来の目的など忘れたように、銀時とお登勢までもが二番手争いに参加する。
三人から五人に増え、何の変哲もない一本のマイクは、お宝のように奪い合いの的となる。
「オゥ! マイ! マーイク!!」
マイクという名の外国男を奪われそうになっている女のように、○○は悲痛な声を上げる。
人生経験の差なのか、マイクはお登勢が握った。だが、まだ誰一人として諦める者はいない。
殴る蹴るの壮絶な戦いが続く中、すっかり忘れられている工場のシャッターが開いた。
中から出て来た人物を見上げ、マイクを奪い合っていた五人は静止した。
人物、ではないかもしれない。
「え?……これが平賀さん?」
出て来たのは、○○達の倍ほどの高さがあり、倍の倍の倍くらいの幅のあるカラクリだった。