第11章 【第十訓】怪盗ふんどし仮面の話
似非棒高跳びは成功した。
○○の手は塀の上へと届き、気合でよじ登る。
ふうッと一息吐くのと、
「アハハハハハ!」
という高笑いが聞こえたのは同時だった。
顔を上げると、○○の正面にその男は立っていた。
声の主は顔を赤褌で覆い、ブリーフ一丁といういで立ちで屋根に立っている。
「あれは」
その風貌には心当たりがある。巷を騒がす、怪盗ふんどし仮面。
若い女性の下着を盗み、モテない男達に配っているという風変わりな泥棒。
○○の下着は自室で陰干しされているため、幸い被害には遭っていない。
「滑稽だ! 滑稽だよ、お前ら!!」
先程から屋敷の庭で行われていた愚行、そして○○の様子も、ふんどし仮面からは丸見えだった。
○○はカエルのような格好で瓦にしがみついている。
滑稽には違いない。
しかし、あの格好の男に滑稽だと笑われるのは釈然としない。
○○がいる所から、銀時らの姿が見える。
神楽に新八、それからもう一人、女性の姿がある。
新八の姉の妙だろう。
話を聞き、状況が把握出来た。
下着を盗まれた妙が、ふんどし仮面を捕まえようと、万事屋一行を巻き込んで画策していたようだ。
ふんどし仮面は華麗に屋根から渡り廊下へ飛び降りると、爆発した。
ドオンと、先程耳にした爆音が響く。
「けふっ」
爆風を顔面にあび、○○は息を吐く。
爆発に巻き込まれてなお、ふんどし仮面は下着を手にして立ち上がった。
「いつまでも野放しにさせるか」
自身の下着は無事とはいえ、女性の敵。それでなくても犯罪者。
元警察の血が騒ぐ。
○○はバランスを崩さないように注意し、上体を起こした。