第11章 【第十訓】怪盗ふんどし仮面の話
「うわァ、立派な建物」
恒道館へとたどりつく。
それは屋敷と言っても過言ではない、広大な敷地を誇る建物。
門下生ゼロでこの建物を維持するのは新八の言うように困難だろう。
妙はスナックでアルバイトをしていると聞いた。
片や、新八の仕事は万事屋のみ。
不安定どころか給料のない月も多い。
姉弟の苦労は絶えないだろう。
「新八くーん! 銀さーん! 神楽ちゃーん!」
道場の門は閉ざされていた。
閂がかかっているのか、押しても引いてもビクともしない。
「新八くーん! 銀さーん! 神楽ちゃーん! いないのー?」
声を上げるも、中からは何の反応もない。
「変だな……」
確かに『恒道館道場』の看板が掲げられている。
場所は間違えていないはずだ。
呼び出しておいて門前払いとは、何事か。
○○は周りを見回す。
塀に囲まれ、他に入り口らしき扉は見えない。
反対側に回れば、裏口があるかもしれない。
角を曲がると、またしても白い塀が続いている。
再度角を曲がった所で、中から言い争うような声が聞こえて来た。
「………ス!」
「……パフェ……!」
「………ダッツ!」
「………!」
他はよくわからないが「パフェ!」の声は銀時だった気がする。
○○は首を伸ばし、長く続く塀に目を向ける。
一ヶ所、茶色くなっている四角い部分が見える。
恐らく、裏口だろう。
銀時を呼び、開けてもらおう。
そう思い、声をかけたが、
「銀さ――」
ドオンという爆音に○○の声はかき消された。
塀の向こうから砂埃が舞い上がる。
○○は一瞬呆気に取られたが、気を取り直して再度声を上げた。