第11章 【第十訓】怪盗ふんどし仮面の話
「ただいまー」
夕刻、日が完全に落ち切る前に○○は仕事を終えて帰宅した。
部屋からは何の物音もしない。
銀時も神楽も出掛けているようだ。
手提げを自室へ置き、冷蔵庫からいちご牛乳を取り出す。
そのパックとコップを持ってリビングに入った時、テーブルに置かれている紙に気がついた。
そこには神楽の字で、
――至急 恒道館に来られたし。
と書かれていた。
文の下には、同じく神楽作と思われる地図があった。
「恒道館?」
恒道館道場。
それは新八と、新八の姉である妙が営んでいる剣術道場。
門下生もおらず、父が残した借金で首が回らないと、新八がこぼしていた。
地図の下に、取ってつけたように書き殴られた文字を見つけた。
――木刀持参!
「剣術の修行でもやるのかなァ」
○○は首を捻る。
窓から空を見上げる。夏の盛りとはいえ、もうじき日が沈む。
なるべくならば表には出たくない。
しかし、神楽の手紙を無視するのも忍びない。
「いざとなったら、新八君チに泊まらせてもらえばいいか」
いちご牛乳を一杯飲んだあと、○○は木刀を手に部屋を出た。