第10章 【第九訓】どれぐらいヤバイかっていうとマジヤバイ話
○○の動きに銀時は目を見張る。
幼い頃から、○○は確かに剣術を学んでいた。
太刀筋はよかった。軸もぶれない。相手の攻撃を見極める能力に長けていた。
しかし、攻撃は上達することがなかった。○○の攻めは常に相手にかわされていた。
○○との立ち合いで、銀時が○○に打ち込まれたことは一度もない。
それが何だ。バッタバッタと天人を薙ぎ払っている。
「どわ!」
目の前に迫る敵を間一髪でかわし、銀時は木刀で殴りつける。
今は○○の剣術について考えている場合ではない。
倒しても、倒しても、埒が明かない。
「何人いんの、こいつら!」
○○は木刀だけでなく、足蹴に頭突きと女性らしからぬ技で応戦する。
「あの白い粉は転生郷!!」
天人の一人が、太助に向かって指をさしている。
○○は敵を倒しながら、その指の先に目を向ける。
見えたのはカツラの下に麻薬を隠していた太助の姿。
組織から抜けるためではなく、麻薬を持ち逃げしようとしたために追われることになったようだ。
天人の一人が公子を人質として、転生郷との交換を言い出した。
公子の首に鎌が突きつけられる。
「って、逃げたよ、アイツ!」
太助は公子を即行捨てて逃げた。
金のためだけに付き合っていたと吐き捨て、太助は公子の元を早々と去る。
「ふざけんな!」
「逃がすかコノヤロー!!」
○○の手から放たれた木刀と、銀時の手から放たれた木刀が、ほぼ同タイミングで太助の頭へと到達する。
ガガンッと連続して頭蓋骨を打つ音が響く。