第10章 【第九訓】どれぐらいヤバイかっていうとマジヤバイ話
「よーし。しっかり掴んどけよ」
コンテナの上に腰に縄を巻いた銀時の姿。
その縄を掴むのは新八と神楽と○○。
「いいなァ、いいなァ」
ヤクの売人を相手にバッタバッタの大活劇。
そんな仕事を○○は想像したが、銀時が立てた作戦は太助をさらって逃げるだけ。
縄を持つだけの裏方なんて、面白くも何ともない。
活劇は演じられなくても、最前線のポジションで仕事がしたい。
「いいなァ、いいなァ」
銀時の体に巻かれた縄をぐいぐいと引っ張る。
引っ張りながら解いている。
「何してんだ、てめ!」
縄が緩まっていることに気づいた銀時は、○○の手からそれを奪って巻き直す。
「いいなァ、私もそっちがいい」
「お前の細腕じゃ、あの体抱えらんねェだろ!」
救助対象である太助の体格は公子と同じく、控えめにぽっちゃりと言うには無理がある。
それに、さらって逃げるだけとはいえ敵の中に放り込まれることに変わりはない。
何かアクシデントがあった場合、危険が伴う。
○○にやらせるわけにはいかない。
「一人だけ主役みたいなポジション、ズルい!」
「だって、主人公だもんねー!」
窮地の太助を目の前に、○○と銀時は不毛な言い争いをする。
「ちょっと! 早く助けに行きなさいよ! 太助に何かあったら許さないからね!」
コンテナの下では、太助が今にも天人達に殺されようとしている。
「うわァァァァァァァ!!」
太助の叫び声が耳を突く。
睨み合っていた銀時と○○は、叫びに呼応してコンテナの下へと注意を変えた。
「飛べ!」
決して○○の命令のためではないが、銀時はコンテナから飛び降りた。
しばらくして、公子も同様に飛び降りた。落下した先は、銀時の上。彼女はその体躯で銀時を押し潰した。