第10章 【第九訓】どれぐらいヤバイかっていうとマジヤバイ話
「お代はこちらへお願いいたします」
○○は一枚の紙を公子に差し出す。
万事屋名義の銀行口座と、振り込むべき金額が書かれている。
「太助助けてくれって言ったのに」
銀時と○○の木刀を食らった太助は、未だに気を失っている。
敵が転生郷に気を取られている隙に逃げ出せたが、太助はこの有様。
「二週間以内に振り込まれなかった場合、貴女の自宅に手榴弾が投げ込まれることでしょう」
「マジありえねー」
公子は渋々と紙を受け取った。
「ありえねーのはお前だろ」
銀時は公子の背に乗る太助を示す。
自分を捨てて即座に逃げた男を、彼女は背負って逃げてきた。
よく似た丸みのある二人の背中を○○は見送る。
「なんだかんだで、いい子だったね、ハム子ちゃん」
銀時は○○の腰に目を遣った。
銀時が使い古した『洞爺湖』の木刀が差さっている。
幼い頃、○○は剣術を学んでいた。
巧みな剣捌き。軸もぶれない。相手の攻めを見極める眼も確かだった。
けれど、打ち込みだけは上達しなかった。
銀時が○○に打ち込まれたことは一度もない。
「○○」
○○は銀時を振り仰いだ。
その顔には幼い頃の面影がはっきりと残っている。
真っすぐに銀時を見、竹刀の先を向けていた○○の顔。
「何?」
「いや」
銀時は後頭部に手を遣り、くしゃくしゃと髪を掻いた。
鋭い一振りで敵を打ち払っていたのは、一体誰なのか。
江戸で出会ったこの女は、銀時の知る○○とは容姿以外まるで別人。