第10章 【第九訓】どれぐらいヤバイかっていうとマジヤバイ話
その日、○○は初めての依頼を受けた。
珍しく鳴り響く電話。鳴り止まない電話。
○○は風呂掃除の手を止めて、リビングへと向かった。
家の主はソファでいびきをかいていた。
電話の音で起きないようでは、今まで依頼を受け損ねていた可能性もある。
○○は呆れながらその横を通り、受話器を持ち上げる。
「はい、万事屋です」
「もしもしィ~。万事屋ァ~?」
「はい。万事屋です」
聞こえて来たのは、気の緩みそうな女性の声。
「ちょっとォ、頼みがあんだけどォ~」
「ご依頼でしょうか」
「そうなんだけどォ~。本当に何でもやってくれんの~? マジでェ~?」
「はい。料金はご相談となりますが、何でもお受けいたします」
「何か~前に助けてもらったことあるみたいで~パパがアンタ達に頼んだらどうかとか言うから~」
噛み合っているのか、いないのか、イマイチわからない会話。
とりあえず依頼の電話には間違いないようだ。
「わかりました。詳しいお話を会って伺いたいので、ご都合のよい日時を教えていただけますか」
「マジ今すぐ助けてほしいんだけど~」
「では、本日ということで、よろしいですか」
「つーか、今あさがおっつー喫茶店にいるからァ~。来てくんない~?」
「あさがお、ですね。承知しました」
名前と連絡先を聞いて電話を切ると、○○は銀時に目を向けた。
ソファの横に膝をつき、その肩を揺すった。
「銀さん!」
耳元で声を上げても、銀時はなかなか目を覚まさない。
「銀さんってば!」
寝返りを打ち、心地よさそうにいびきをかいている。
「起きろ!」
「いてててて!」
耳を掴んで引っ張り上げると、ようやく銀時は目を覚ました。
「何しやがんだ!」
「仕事!」
「仕事?」
耳をさすりながらも、仕事という言葉に銀時は反応を示した。
「依頼の電話が来た」
銀時はあくびをしつつも立ち上がった。
「神楽ちゃーん、仕事だよー」
○○は玄関前から階下を覗き込み、外で遊んでいた神楽を呼ぶ。
喫茶店の前で新八と合流し、一向は依頼主の元へ向かった。