第9章 【第八訓】昔の武勇伝は三割増で話の話
「次はその棚の瓶、全部下ろして隅々まで拭いて。期限も見ておくれよ」
銀時は早々に逃亡し、清掃作業は○○と新八と神楽、それにキャサリンで分担された。
○○は棚の拭き掃除に取りかかっている。
「はいよ」
○○は淡々と作業をこなす。
真選組でも、万事屋でも、『スナックお登勢』でも、やることは変わらない。
「アンタ、よく働くね。どうだい、うちで働く気はないかい。家賃の足しにもなるよ」
「ありがたい話ですが、夜はきっちり寝る派なので遠慮します。寝不足はお肌の大敵です」
「そりゃ残念だね」
最近、○○は気づいたことがある。
夜、自分は外に出られないのではないか。
銀時に連れて来られた時も、公園で目を覚ました時も、夜になってからの記憶がない。
今までも、夜中に屯所の外にいた覚えがなかった。
門限があったわけではないが、○○は夜に出歩くことがなかった。
「アンタ、なんで銀時の所になんて居座ってるんだい」
それはなぜだったかと、思い出す前にお登勢によって思考は遮られた。