第9章 【第八訓】昔の武勇伝は三割増で話の話
「でも、こんな所で何やってるんだろうっていうのは本当だよ」
「え?」
「ここに来てから、ずっとこんなことばかりしてるから」
定春を盾に居候することが決まった日から、○○は家事を請け負っている。
真選組にいた頃の習慣は簡単に消えるものではない。
買い物に出て、料理を作り、掃除をし、一日が終わる。
住む場所が変わっただけで、やっていることは何一つ変わらない。
自分は一体、何をしているのだと、突然、○○は我に返った。
「僕は楽になりましたけどね」
今まで、万事屋の雑事は新八が担っていた。
担当が二人に増え、新八は助かっている。
○○が初めて万事屋を訪れた時、あの男にしては片付けていると思ったが、新八が掃除をしていたようだ。
「そう言ってもらえると、ありがたいけど」
「本当、助かってますよ。ありがとうございます」
二人は微笑み合った。
「じゃなくて!」
「ひい!」
突然包丁を向けられ、新八は青ざめる。
「私は過去を知るためにここに来たの! 家事手伝いに来たわけじゃない!」
「お、落ち着いて下さい! ていうか、包丁置いて下さい!」
刃先が目の前でギラギラと光っている。上下左右に振り回される。
万が一、すっぽ抜けでもしたら確実にメガネを貫通する。
「あの天パ野郎、余程過去にトラウマでもあるのかな」
過去のことに関しては、いくら定春に噛まれても爪を立てられても、銀時は口を割らない。
○○は表情を曇らせた。