第63章 【第六十二訓】スキーに連れて来た将軍様はお帰り遊ばしたの話
「随分信頼してるじゃねーか。あんなロクデナシのボンクラをよォ」
未だに二人の関係を知らない土方は、恋人の前で銀時を侮辱する言葉を並べ立てる。
「ろくでもなくて無能で甲斐性なしの誰かよりよっぽど信頼してるよ」
土方はこめかみに青筋を浮かべる。
「その誰かってのは誰だ? あ?」
「指名手配のテロリストに逃げられまくってる挙句、また遭難しかけてる間抜けな警察」
「テメッ――」
「銀さァァん!!」
土方を無視し、○○はズカズカと歩みを進める。
「オイ! 闇雲に動くな!」
「銀さァァァァァん!!」
○○は聞く耳を持たず、なおも声を上げる。
「狼煙を上げて救援を――」
「銀さァァァん! どこォォォォ!!」
「聞けよ、テメェ!!」
「銀さ――」
○○は口を噤んだ。
ゴゴゴゴゴという不穏な音が聞こえる。
「なっ……」
土方は目を瞠った。
猛スピードで多量の雪が押し寄せていた。
ここしばらく降り続いた雪が、表層雪崩となって襲い来る。
逃げる時間はない。○○は目を瞑った。
○○と土方が立っていた場所は、あっという間に雪の下へと埋もれてしまった。