第63章 【第六十二訓】スキーに連れて来た将軍様はお帰り遊ばしたの話
○○は雪の上で目を覚ました。
周囲には樹木が生い茂っている。人の姿は見えなかった。
どうやらコース外に滑り降りてしまったようだ。
「銀さん? どこォ?」
○○だけではなく、銀時と土方も桂雪玉に巻き込まれていた。
きっと近くにいる。そう思いたい。
願いが通じたのか、雪上を歩く微かな音が○○の耳へと届いた。
「銀さん!?」
「悪かったな。万事屋じゃなくて」
「なんだ、トシか」
木の陰から姿を現したのは、眉間に皺を寄せた土方だった。
○○はあからさまに落胆の色を見せる。
「なんで二日続けて遭難しなきゃならねーんだ」
吹雪いた昨日と違い見通しはいいが、山の天気はいつ変転するかわからない。
夜までに戻れなければ凍死のリスクもある。
昨日は隊士隊が捜索していたが、今は自分達が遭難したことを知る者はいない。
自力で脱しなければならない。
「大丈夫だよ。銀さんが見つけ出してくれるから」
「アイツも巻き込まれてんだ。合流できても、遭難者が三人になるだけだろーが」
「そんなことない」
自分が窮地に立たされた時、銀時は必ず助けてくれる。
○○はそう信じている。