第63章 【第六十二訓】スキーに連れて来た将軍様はお帰り遊ばしたの話
「ったく。ビビらせんな」
「銀さん!」
目を開けると、○○は銀時に抱えられていた。
間一髪の所で銀時は○○を救い出していた。
「よかった。無事で」
銀時の姿を見た○○は顔を綻ばせた。
ピンチの時は助けに来てくれると信じてはいたが、姿を見るまでは安心できなかった。
○○は周囲を見回した。近くにいた男が、見えなくなっている。
「銀さん、トシは?」
銀時は無言で視線を向けた。そこは新雪で埋もれた場所。
土方は逃げられず、雪崩に巻き込まれた。
「ウソ」
○○は顔を青くする。
いくら普段悪態をついているとはいえ、命の危機が迫れば穏やかではいられない。
「ト、トシ――」
「ぶはっ!」
○○のすぐ近くの足元から、男は大きく息をして顔を出した。
ゼイゼイと呼吸をし、雪を搔き分け上ってくる。
「○○――!」
「なんだ、生きてたのか」
「万事屋!」
四つん這いの格好で土方は銀時を見上げた。
隣には○○の姿。○○が無事だった安堵と共に、自身に対する情けなさが湧き上がる。
「……テメェの言った通りってわけか」
土方は雪上に腰を下ろした。
○○には雪崩に巻き込まれた形跡がなかった。
土方のすぐ近くにいたにも関わらず。誰かが助けたとしか思えない。
その人物は、この男の他にはありえない。
ロクデナシのボンクラ男に、○○は助けられている。