第63章 【第六十二訓】スキーに連れて来た将軍様はお帰り遊ばしたの話
「セクハラっちゃあ、セクハラだけどね」
○○は土方に同意する。
銀時と○○の関係ならばいいが、そうでなければ充分セクハラに値する。
「それにしても、いつまでいんの。早く帰りなよ」
土方は護衛で雪山を訪れたが、将軍が帰った今もこうして残っている。
真選組には江戸を護る使命がある。
こんな所で油を売っていることを、○○には看過できない。
それに、単純に邪魔だ。
「桂のヤローがまだ残ってんだ。易々と帰れるか」
将軍を付け狙っていたのか、桂もこの山を訪れていた。
昨日は共に遭難をした。
命の危機に瀕する事態だったため昨日は停戦したが、無事に帰還した今、今度こそ捕まえなければ体面が保たれない。
「だから、ここに居たってムダだってば」
朝から、土方と桂は追いかけっこをしていた。
○○の元へと現れた桂を、土方が見つけ、逃げる桂を追いかける。
しばらくするとまた○○の元に現れた桂を、また土方が見つけ、また追いかける。
何度か繰り返した後、土方は追いかけることをやめた。
桂は必ず○○の元へとやって来る。ならば、ここで待てばいい。
「トシがいる所にわざわざ来るわけないじゃない」
「あのバカのことだ。俺がいようが構わず来んだろ」
土方は涼しい顔で言い放つ。
頷きかけた○○だが、慌てて首を横に振る。
「いくらバカツラでも、そこまでバカじゃ――」
「○○殿ォォォォ!!」
山の上方から、長髪を靡かせてその男は降りて来た。