第61章 【第六十訓】イボは自分でとっちゃダメな話
「やめなさい、新ちゃん!!」
屯所へと戻る道すがら、○○は知り合いの声を聞いた。
それは妙の声であり、新ちゃんという名前から新八もいることが判断できる。
新八がいるとなれば、十中八九、そこには沖田、あるいは――
「見てェ!! この前髪を!!」
声の元へとたどり着いた○○は、その存在に驚愕した。
妙は赤子を抱いていた。V字の前髪をした、土方の血を引いていると思われる赤子を。
貴方への想いを押し殺し、ゴリラと夫婦を続けることは出来ないと妙は土方に訴えている。
「どういう、こと……?」
V字前髪の赤ん坊を目の当たりにし、○○は戦慄く唇で言葉を紡ぐ。
「○○さん?」
新八には、○○が体を震わせている理由はわからなかった。
わかるのは、当人達のみ。
「私と一緒になる約束は……あの言葉は嘘だったの?」
「○○さんんんんん!?」
ゴリラと姉と土方の三角関係に愕然とした新八。
さらに○○までが加わり、新八の脳内は大混乱。
「○○、すまねェ……」
土方は目を伏せた。
「俺はお前を愛してる。だが……父親として責任を取らなきゃならねェ!!」
土方は赤子をその手に抱いた。
○○は蒼白となり、放心状態になっている。